ビジネスパーソンの副業は青色申告がお得?条件とメリットを解説
2026.5.31(日)
副業への関心が高まる現代、本業とは別にスキルアップできる環境を求めていたり、新しい収入の柱を築きたいと考えるビジネスパーソンが増えています。
しかし、副業を始めると必ず向き合う必要があるのが「確定申告」です。
この記事では、特に節税効果が高いとされる「青色申告」に焦点を当て、その条件やメリット、具体的な始め方を分かりやすく解説します。
そもそも青色申告とは?白色申告との違い
確定申告には、大きく分けて「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
副業を始めたばかりの方には、あまり馴染みのない言葉かもしれません。
青色申告は、事前に税務署への申請が必要で、少し複雑な帳簿付けが求められる代わりに、税制上の大きなメリットを受けられる制度です。
一方で、白色申告は事前の申請が不要で手続きが比較的簡単ですが、青色申告のような特別な節税メリットはありません。
どちらを選ぶかで、納める税額に差が出ることがあります。
確定申告における青色申告と白色申告
青色申告と白色申告の最も大きな違いは、税制上の優遇措置の有無です。
青色申告は、正規の簿記原則(原則として複式簿記)で日々の取引を記帳し、その帳簿に基づいて申告することで、最大65万円の特別控除など、様々な特典を受けられます。
これに対して白色申告は、簡易的な記帳が認められており、事前の申請も不要なため手軽に始められますが、青色申告のような特別控除はありません。
| 青色申告 | 白色申告 | |
| 事前の届出 | 必要 | 不要 |
| 記帳方法 | 複式簿記(原則) | 簡易簿記 |
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 赤字の繰越 | 可能(3年間) | 不可 |
副業で確定申告が必要になる所得の基準
副業で確定申告が必要になるかどうかの判断基準は、本業の給与について年末調整を受けている給与所得者の場合、本業の給与所得以外の年間の所得が20万円を超えるかどうかです。
ここで言う「所得」とは、副業で得た収入の総額から、その収入を得るためにかかった必要経費を差し引いた金額のことです。
例えば、Webライターの副業で年間の売上が30万円、経費が5万円だった場合、所得は25万円となり確定申告の対象となります。
所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要になる点には注意しましょう。
なお、副業所得が20万円以下で確定申告が不要となるケースでも、確定申告をしたほうが良い場面もあります。
具体的には、住宅ローン控除の初年度・年間の医療費が一定額を超えた医療費控除・副業の支払元で源泉徴収された所得税の還付を受けたい場合などです。
加えて、これらの控除や還付は確定申告をしない限り反映されません。
つまり、申告不要の基準を下回っていても、自分にとって申告したほうが手取りが増えるケースは少なくないということです。
確定申告の具体的な申告条件については、「副業の確定申告はいつ必要?所得区分・経費・青色申告まで徹底解説」にて解説しておりますので参考にしてください。
青色申告の対象となる「事業所得」とは
青色申告は、誰でも利用できるわけではありません。
この制度を利用できるのは、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある人に限られます。
ビジネスパーソンの副業の場合、その多くは「事業所得」または「雑所得」に分類されます。
青色申告のメリットを享受するためには、自身の副業収入が「事業所得」として認められることが大前提となります。
ここでは、「事業所得」と「雑所得」の違いについて詳しく見ていきましょう。
副業収入は事業所得か雑所得か。判断基準を解説
副業の収入が「事業所得」か「雑所得」か、その判断は簡単ではありません。
一般的に、反復・継続・独立して行われる仕事で、社会通念上「事業」と認められるものが事業所得に該当します。
判断基準としては、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における事業遂行性の有無などが挙げられます。
一方で、単発のアルバイトやたまに行う講演の謝礼など、余暇を利用した小遣い稼ぎの範囲にとどまる活動は「雑所得」に分類されることが多いです。
また、副業などの「業務」に係る所得については、2022年分以降(現在も継続している運用として)、年間の収入金額が300万円以下で、かつ帳簿書類を作成・保存していない場合は、原則として「雑所得」として取り扱うという考え方が示されています。
一方で、年間の収入金額が300万円を超えている場合や、300万円以下であってもきちんと帳簿や領収書を保存している場合には、従来どおり、営利性・継続性・独立性などを総合的に見て「事業所得」に該当するかどうかを判断することになります。
青色申告をしたい場合は、自分の副業が事業としての実態を備えているかどうかが重要なポイントです。
「事業所得」と認められるための帳簿保存の重要性
副業収入を「事業所得」として認めてもらうためには、客観的な証拠が重要になります。
特に2022年分の確定申告以降、現在まで継続している運用として、帳簿書類の保存の有無が、事業所得と雑所得を分ける重要な判断基準のひとつとして明確化されました。
つまり、日々の売上や経費をきちんと帳簿に記録し、関連する請求書や領収書を整理・保存していることが、事業として活動している実態を示す上で不可欠ということです。
これは青色申告を行うための基本的な要件でもあり、事業所得として申告するための第一歩と言えるでしょう。
副業の確定申告で青色申告を行うメリット
副業収入が事業所得として認められれば、青色申告を選択できます。
青色申告には、税金の負担を軽減するための様々なメリットが用意されています。
手続きの手間はかかりますが、それを上回る恩恵を受けられる可能性が高いです。
ここからは、ビジネスパーソンが副業で青色申告を行う具体的なメリットを4つ紹介します。
青色申告特別控除による税負担の軽減
青色申告の最大のメリットは、「青色申告特別控除」です。
これは、所得金額から一定の額を差し引ける制度で、控除額は最大で65万円にもなります。
65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳、期限内申告、そしてe-Tax(電子申告)または電子帳簿保存が必要です。
所得税率が10%の場合、65万円の控除を受けられれば、所得税と住民税(住民税率10%と仮定)を合わせて約13万円の節税につながる計算になります。
この特別控除・節税効果は、白色申告にはない大きな特典で、所得規模が大きくなるほど高まる傾向があります。
つまり、課税所得が330万円を超え所得税率が20%に上がる層では、所得税・住民税を合わせて約20万円程度の節税につながる目安となります。
※これはあくまで目安であり、税率や控除状況によって変動します。
赤字を翌年以降3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」
副業を始めたばかりの時期は、機材の購入などで経費がかさみ、赤字になることもあります。
青色申告では、その年に出た赤字(純損失)を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺することができます。
これを「純損失の繰越控除」と呼びます。
例えば、1年目に30万円の赤字が出て、2年目に50万円の黒字が出た場合、2年目の所得を20万円(50万円-30万円)に圧縮でき、その年の税負担を軽減できます。
この制度は、事業が軌道に乗るまでを支えてくれる心強い味方です。
経費として計上できる費用の範囲が広がる
青色申告だからといって、白色申告に比べて経費として認められる範囲そのものが広がるわけではありませんが、
例えば、自宅で副業をしている場合、家賃や水道光熱費、通信費などの一部を事業用の経費として計上する「家事按分」のルールが白色申告に比べて緩やかに適用されるメリットはあります。
また、生計を同一にする配偶者や親族に支払う給与について、白色申告は「事業専従者控除(限度額あり)」となる一方、青色申告では、業務内容に照らして適正な金額であれば全額必要経費にできる「青色事業専従者給与」という制度を利用することができます。
「青色事業専従者給与」を経費にするには、事前に税務署へ届出書を提出していることや、その配偶者や親族が専らその事業に従事していることなど一定の要件を満たす必要があることに気を付けてください。
とりわけ「青色事業専従者給与」は、所得分散による独立した節税手段として再注目したい制度です。
具体的な要件は、
- 事前に税務署へ届出書を提出すること
- 対象の親族が専らその事業に従事していること
- 業務内容に照らして適正な金額であること
の3点です。
たとえば、配偶者に経理や入稿補助などを継続して手伝ってもらう場合、これらの要件を満たせば給与額を全額経費にできます。
これらの制度を活用することで、所得をさらに圧縮し、節税効果を高めることが可能です。
少額減価償却資産の特例で一括経費計上が可能に
副業でパソコンやデスクなど、高額な備品を購入することもあるでしょう。
通常、10万円以上の資産は一度に経費にできず、数年に分けて経費化する「減価償却」という手続きが必要です。
しかし、青色申告者には特例があり、取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば年間合計300万円まで、購入した年に全額を経費として計上できます。
これを「少額減価償却資産の特例」と呼びます。
この特例を使えば、初期投資の負担をその年の税金面で大きく軽減させることが可能です。
貸倒引当金で売掛金の未回収リスクに備える
青色申告のメリットとしてもう一つ押さえておきたいのが、売掛金などの貸倒れに備えて費用を前倒し計上できる「貸倒引当金」です。
青色申告の個人事業主は、年末時点で残っている売掛金や貸付金などの合計額の5.5%(金融業の場合は3.3%)を一括評価により貸倒引当金として必要経費に算入できます。
つまり、白色申告でも貸倒引当金は使えるものの個別評価のみで実務上計上しにくく、青色申告のほうが将来の未回収リスクを織り込みやすい仕組みになっています。
副業で売掛金が発生する場面は意外と多く、請求書を発行してから入金まで1〜2か月のタイムラグがあるクライアントワークが典型例です。
会社勤めのビジネスパーソンが副業で継続的に取引先を持つ場合、青色申告と組み合わせて貸倒引当金を活用することで、未回収リスクへの備えと節税効果を両立できます。
副業で青色申告を始めるための2ステップ
多くのメリットがある青色申告ですが、「手続きが難しそう」と感じるかもしれません。
しかし、ポイントを押さえれば、決して複雑ではありません。
青色申告を始めるために必要な手続きは、大きく分けて2つのステップありますので、具体的に何をすれば良いのかを分かりやすく解説していきます。
ステップ1:税務署へ「開業届」を提出する
青色申告をするためには、まず個人事業主になる必要があります。
そのために、納税地を所轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を提出します。
この書類は、新たに事業を開始したことを税務署に知らせるためのものです。
提出期限は、原則として事業を開始した日から1ヶ月以内と定められています。
開業届は国税庁のWebサイトからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも入手できます。
ステップ2:期限内に「青色申告承認申請書」を提出する
開業届を提出するのとあわせて、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
この申請書を提出することで、青色申告を行う承認を税務署から得ることができます。
この時、最も重要なのが提出期限です。原則として、青色申告を受けたい年の3月15日までに提出する必要があります。
ただし、その年の1月16日以降に新規開業した場合は、事業開始日から2ヶ月以内が提出期限となります。
この期限を過ぎてしまうと、その年は白色申告しかできなくなるため注意が必要です。
申請書の提出方法は、e-Tax(電子申告)・郵送・税務署窓口の3経路から選べます。
加えて、後述する最大65万円の特別控除を狙うのであれば、e-Tax による電子申告か電子帳簿保存が必須要件となります。
通勤前後の時間でも自宅から完結できる e-Tax は、ビジネスパーソンの副業と相性の良い提出方法のひとつです。
青色申告を始める前に知っておきたい注意点
節税メリットの大きい青色申告ですが、恩恵を受けるためには、それに伴う義務やルールを守る必要があります。
メリットだけに目を向けて安易に始めてしまうと、後から「こんなはずではなかった」ということになりかねません。
ここでは、青色申告を始める前に必ず知っておきたい注意点を2つ解説します。
しっかりと理解した上で、青色申告に挑戦するかどうかを判断しましょう。
複式簿記での記帳と帳簿の保存義務
青色申告で55万円または65万円の特別控除を受けるためには、「複式簿記」という正規の簿記の原則に従って記帳する必要があります。
これは、お金の出入りを単に記録する簡易簿記とは異なり、資産や負債の増減も含めて記録する少し複雑な方法です。
最近では、会計ソフトを使えば簿記の知識が少なくても比較的スムーズに帳簿を作成できます。
また、作成した帳簿や、取引に際して受け取った請求書・領収書などの書類は、原則として7年間保存する義務があることも覚えておきましょう。
特別控除の満額適用には電子申告(e-Tax)が必須
青色申告特別控除の最高額である65万円の適用を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
複式簿記での記帳と、確定申告の期限内提出に加えて、「e-Taxによる電子申告」または「電子帳簿保存」のいずれかを行うことが必須です。
もし、作成した申告書を印刷して税務署の窓口に持参したり、郵送で提出したりした場合は、控除額が55万円となります。
10万円の差は大きいので、65万円控除を目指すのであれば、マイナンバーカードの取得などe-Taxの準備を進めておきましょう。
最新の制度動向として、令和8年度税制改正大綱では令和9年分以後の青色申告特別控除の見直しが盛り込まれました。
具体的には、書面提出の場合は現行の55万円から10万円へ大幅に減額される一方、e-Tax による電子申告に加えて優良な電子帳簿または電子取引データ保存を行う場合は最大75万円まで拡充される見通しです。
ただし、令和8年分の確定申告までは従来どおり最大65万円控除が適用されます。
なお、税制改正大綱はあくまで方針であり、国会審議を経て確定する点には留意してください。
副業の青色申告でよくある質問
ここでは、副業の青色申告を検討する過程で特に質問が集まりやすい3つのテーマを取り上げます。
記事を読み進めるなかで残った疑問の整理に活用してください。
副業が雑所得でも青色申告はできますか?
結論として、青色申告ができるのは事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかに該当する場合に限られ、雑所得は対象外です。
つまり、副業を青色申告したい場合は、自分の収入が事業所得として認められる実態(継続性・反復性・帳簿保存の有無など)を備えているかを先に確認する必要があります。
判断軸は本記事の「青色申告の対象となる『事業所得』とは」セクションを参考にしてください。
青色申告に会計ソフトは必要ですか?
必須ではなく、複式簿記の知識があれば手書きやスプレッドシートでも対応は可能です。
しかし、副業と本業を両立しながら複式簿記での記帳・電子帳簿保存・e-Tax 連携まで現実的に進めるとなると、会計ソフトを利用したほうが帳簿作成の負担は大きく下がります。
加えて、銀行口座やクレジットカードとのデータ連携機能を使えば、入力作業を最小限に抑えやすくなります。
副業の所得が大きくなったら法人化を検討すべきタイミングは?
一般的な目安としては、副業の所得が800〜900万円超、または売上が1,000万円超になったタイミングが法人化を検討するひとつのラインとされています。
これは個人の所得税率が法人税率を上回りやすくなるラインや、消費税の課税事業者となる売上ラインに関係しています。
ただし、法人化の最終判断は、本業との両立可能性・社会保険負担・事務コストなど多角的に検討する必要があり、税理士など専門家への相談が望ましいです。
募集だけでなく節税対策にも目を向けて副業を始めよう
今回は、会社員勤めのビジネスパーソンが副業で青色申告を行うための条件やメリット、具体的な手続きについて解説しました。
青色申告は、複式簿記での記帳など一定の手間はかかりますが、最大65万円の特別控除をはじめとする税制上のメリットは非常に大きいです。
副業を単なるお小遣い稼ぎで終わらせず、事業として捉え、適切に税務申告を行うことは、自身のキャリアビルディングを考える上でも重要なステップです。
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税理士・高橋 通彰(たかはし みちあき)
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